ワークフロー再構築とオペレーションのDX化により、独立企業体としてのバックオフィス体制を確立

 

 

業務改革リーダー

CFO(Chief Financial Officer)

岡本 広生

私たちi-PROは、パナソニック社のセキュリティシステム事業部を母体として設立されました。そうした設立経緯から、独立企業体として自前の経理体制を持っていなかったため、事業独立直後は経理業務全般においてパナソニック社のシェアードサービス会社のサポートを受けていました。稟議や請求書の処理など最適化されたシステムによる理想的なバックオフィス環境でしたが、この業務支援は事業独立後の一定期間までと期限が設けられていました。そのためファイナンス部門として自前の経理システムの構築や、それを前提とした業務フローの整備が急務でした。

 

なお、私たちはグローバル企業ですが、ここでは、全業務のうち大きな割合を占める本社および日本拠点における事例を主としてご紹介いたします。



 ■業務ワークフロー整理とクラウドサービスの活用

 

パナソニック社からの独立に際し、基幹システムについては、CIOチーム(Chief Information Officerがリーダーのビジネスプロセステクノロジー組織)との共創により、グローバルで1つの基幹システムに統合することができました。一方で、パナソニック社のバックオフィス環境の利用期限を迎えたことにより、独立企業体としての経理業務自体は大きく後退する状況となりました。請求書処理を紙ベースで行わざるを得なくなり、膨大な工数の発生と業務の混乱とに直面しました。そんな中で、i-PROの戦略コンセプトである「オープンポリシー」をファイナンス部門の視点から柔軟に解釈してたどり着いた答えが、パートナー企業とのタッグによる業務ワークフロー整理と、クラウドサービスの活用による経理システム構築でした。

 

 

■ファイナンス部門における「オープンポリシー」

 

i-PROの戦略は、大きく2つのコンセプトから成り立っています。そのひとつである「オープンポリシー」とは「水平分業」のことで、メーカーとしてハードウェアに特化し、ソフトウェア等の部分はパートナー企業と分業することを意味します。この戦略は、生産や開発部門のみならず、全社的な経営指針となっています。何から何まで社内リソースのみで完結しようとして膨大な工数の発生と業務の混乱に直面していた私たちファイナンス部門は、この戦略コンセプトに立ち戻って考えてみることにしました。


ファイナンス部門におけるオープンポリシーとは何なのでしょうか? それは経理を含むバックオフィスのオペレーションを水平分業することです。例えば、喫緊の課題である請求書受領処理に当てはめて考えるならば、外部のクラウドシステムを活用して処理の一部を分業することと解釈できます。


一方、大手企業の一部門であったがゆえに業務ワークフローの複雑化という課題を抱えていた私たちにとって、社内の状況に合わせてカスタマイズしながらクラウドシステムを導入することはハードルが高いものでした。そこで、私たちの課題を理解してくれる社外パートナーと連携し、独立企業体として過不足のない形に業務ワークフローを整理しながら、クラウドシステムの導入を進めることにしました。



■業務フロー整理とクラウドシステム導入による効果

 

請求書受領処理の課題のひとつに、請求書の回収がありました。例えば、お客様の状況により回収方法が異なっていたり、回収した請求書と担当する事業部門との紐づけが複雑であったりという内容です。当社が導入したクラウドシステムでは、様々な請求書回収オプションを用意することが可能であったため、回収から紐づけまでの業務をクラウドシステムに移管する形に業務フローを整理しました。その結果、お客様の事情に最も適した請求書回収方法を、事業部の担当者によって選んでもらうことができるようになり、また、回収した請求書は事業部ごとに整理整頓されるため、回収後に「この請求書は何だっけ」「どの事業部に聞けばいいのだろう」と悩むこともなくなり、事業部門とのコミュニケーションがスムーズになりました。


請求書回収後の課題としては、稟議申請部門と支払部門が異なることによる混乱がありました。これらの決裁フローをクラウドシステムに移管する形に整理することにより、稟議から請求書の支払いまでを、適切なチェック行程を設けつつ一気通貫で処理できるようになりました。その結果、紙処理に疲弊していたバックオフィスの業務は大いに効率化され、現在では、紙処理で行うと一カ月以上かかるような作業が、2時間程度にまで短縮化されています。



■ファイナンス部門における「タイムベース競争」

 

クラウドシステムによるバックオフィスのオペレーションは、上述の請求書受領処理を皮切りに効率化が進められ、現在では請求書の発行処理についてもDX化されています。


i-PROには、上述の「オープンポリシー」と対を成す「タイムベース競争」という戦略コンセプトがあります。これは時間の価値を最大化し、ライバルとの差別化を図るというものです。バックオフィスのオペレーションに紐づけて考えるなら、インボイス制度や電子帳簿保存法など目まぐるしく変化する外部環境にすばやく対応し、お客様にとって最適なパートナーであり続けることと解釈できます。私たちのバックオフィスのオペレーションを素早く正確に行うことは、お客様のバックオフィスの効率化につながります。これはすなわちお客様の時間価値を大切にすることであり、バックオフィスにおいてもこのような形で「タイムベース競争」を実現しています。



■より高度な数値活用による意思決定のサポートへ

 

ファイナンス部門が果たすべき役割は、バックオフィスのオペレーションだけではありません。オペレーションの結果として現れる財務数値をマネジメントによる意思決定に生かすため、より高度な情報連携とグローバル化を進めています。基幹システム(PowerBI*)への数値集約により業績把握のリアルタイム性を高め、グローバルのすべての拠点で同じ数値を前提に議論ができるよう改善したこともそのひとつです。

これからも事業成長に伴走するファイナンス部門として、経営層による迅速な意思決定をサポートしていくことを目指しています。


*PowerBIはMicrosoft社が提供しているBI(ビジネスインテリジェンス)ツール