DX活用によるサプライチェーンの可視化と短サイクルオペレーションによる供給納期・財務数値・従業員自律性の三位一体改革
業務改革リーダー
CTVO(Chief Time-Value Officer)/ Operations Head
田島徹也
i-PROのタイムベース競争とは、次の2つの領域でオペレーショナル・エクセレンスを構築することを意味します。ひとつはエンジニアリングチェーン、すなわち製品開発のリードタイムであり、もうひとつはサプライチェーン、すなわち製造と物流のリードタイムです。これにより、どこよりも早くお客様へ最新の技術を提供し、最適サプライチェーンによって短納期を実現してお客様の時間価値を大切にします。
オペレーションマネジメントチームでは、「タイムベース競争」を以下の相反する要素の同時実現で具現化しています。
- お客様が求める商品を、必要な時に、必要な量だけお届けするための受発注・出荷・物流オペレーション
- 適正な在庫水準とキャッシュサイクルを維持するための在庫管理オペレーション
お客様ニーズに加え、半導体部品の調達や国際輸送能力等、外部環境も変動性・不確実性が高まる中、上記2つを両立する難易度は、年々高まっています。これらを実現するために様々な変革を進めてきました。
■「全体最適のマネジメント」実現に向けたDX変革
i-PROは、主に2つの自社工場と4つの販売拠点(日本・アメリカ・EMEA・APAC)で事業を展開しています。
2019年にi-PROが独立企業となる前は、販売・工場間の情報連携が“大バッチ月次サイクル”(3か月先の事前確定)で行われ、更にグローバルで在庫と納期の実態が見えず、全体統括機能が不在の状況でした。部門間・機能間の連動が低いことにより需要と供給が同期されず、長い供給リードタイムと販売機会損失→高い在庫水準→キャッシュサイクル悪化、そして、緊急対応の増加による従業員のモチベーション低下という負のスパイラルに陥っていました。
独立後、私たちが目指したのは、“全体最適のマネジメントのための可視化”と“情報連携短サイクル化”の実現です。独立を期に、基幹システムのグローバル統合とDWH(Power BI*)が導入され、各販売拠点・工場の受発注・納期・在庫情報の横断的な見える化が実現されました。これを起点に、本社が全体を統括し、目標供給納期とグローバル全体で最適な在庫配置基準の設定、実需に基づく日次の受発注オペレーション連携が進んでいきます。加えて、横断的な可視化によって、担当者の業務範囲が広がり、機能別の人員配置(例:受注担当・出荷担当)から販売地域別の人員配置に転換することで、メンバーの裁量が大きく広がりました。
結果として、短い供給リードタイムと販売機会損失減→在庫水準低下→キャッシュサイクル向上、そして従業員の自律性向上の好循環サイクルが生まれています。例えばアメリカでは、標準供給リードタイムに従来30~90日かかっていたものが現在では3~21 日に短縮され、全体のキャッシュサイクルは90~100日から70-80日になりまた。
■次の成長ステージに向け、よりグローバルEnd To Endでシームレスなオペレーションの連携
現在、次の進化に向けて、情報連携の広域化を進めています。営業パイプライン情報や販売パートナーの受発注・在庫情報、更に輸送トラッキング情報等、サプライチェーンEnd To Endで情報連携を更に広げ、シームレスにつながるオペレーションを目指しています。
それによって、より時間価値の高いサプライチェーンをお客様に提供し、お客様とi-PROの成長に貢献していきたいと考えています。
*PowerBIはMicrosoft社が提供しているBI(ビジネスインテリジェンス)ツール